慢性胃炎

慢性胃炎とは?Chronic Gastritis-01

「胃の不調が続く」「胃もたれしやすい」
そんな状態が長く続いている場合、慢性胃炎の可能性があります。

慢性胃炎とは、胃の粘膜に炎症が長く続いている状態を指し、放っておくと粘膜が薄くなって萎縮性胃炎に進行し、
将来的に胃がんのリスクを高めることもあります。
ピロリ菌感染や生活習慣が関係していることが多く、早めの検査・治療が大切です。

慢性胃炎と萎縮性胃炎の関係
Chronic Gastritis-02

簡単に言うと、

慢性胃炎

  胃粘膜が薄くなる 

 萎縮性胃炎

という流れです。

慢性胃炎は「胃粘膜に炎症が続いている状態」を指し、
萎縮性胃炎は、その炎症によって胃の粘膜が薄くなった状態を指します。
つまり、萎縮性胃炎は慢性胃炎が進行した状態といえます。
実際には、医療機関で「慢性胃炎」と診断される場合、その多くは萎縮性胃炎を伴っています。

慢性胃炎の原因

ピロリ菌(Helicobacter pylori)感染

最も多い原因です。
ピロリ菌が胃粘膜に感染すると、慢性的な炎症が起こり、長年かけて粘膜が萎縮していきます。
ピロリ菌感染による慢性胃炎は、萎縮性胃炎胃がんのリスクにも関係します。
胃カメラや血液検査・尿素呼気試験などで感染の有無を確認でき、陽性であれば除菌治療を行います。


加齢による胃粘膜の変化

年齢とともに胃粘膜の防御力が低下し、炎症が起こりやすくなります。
ピロリ菌に感染していなくても、加齢により胃酸の分泌や粘液の分泌が減少し、慢性胃炎を起こすことがあります。


薬剤(特にNSAIDsなど)

痛み止め(ロキソニン、イブプロフェンなど)を長期的に使用すると、胃粘膜が傷つき、慢性的な炎症を引き起こすことがあります。
これを「薬剤性胃炎」と呼びます。
胃を守る薬(PPIやH2ブロッカー)を併用することで予防可能です。


ストレス・生活習慣

過度なストレスや不規則な生活、食事の乱れ(早食い・過食・アルコール・喫煙など)は、胃の自律神経のバランスを崩し、胃の血流や粘液分泌を低下させます。
その結果、炎症が長引き、慢性化することがあります。


以下、特殊なタイプですが、慢性胃炎の原因となることがあります。

自己免疫性胃炎

自分の免疫が誤って胃粘膜を攻撃することで起こる、まれな慢性胃炎です。
主に胃の上部(胃体部)に起こり、ビタミンB12欠乏による貧血(悪性貧血)を伴うことがあります。
内視鏡検査や血液検査で診断します。


放射線による胃炎(放射線胃炎)

がんの治療などで胸部や上腹部に放射線を照射した場合、その影響で胃粘膜に炎症が起こることがあります。
一時的な炎症だけでなく、照射後しばらくして慢性的な炎症や潰瘍が生じることもあり、これを「放射線胃炎」と呼びます。
胃粘膜の血流が低下して治りにくくなるため、治療には時間がかかることがあります。


ハイルマニ菌(Helicobacter heilmannii)感染

ピロリ菌と同じ仲間の細菌で、猫や犬などの動物からうつることがあります。
感染はまれですが、胃粘膜に慢性的な炎症を起こし、ピロリ菌胃炎と似た所見を示します。ピロリ菌が陰性の方でも、この菌の感染を確認することがあります。

慢性胃炎の主な症状Chronic Gastritis-03

  • 胃のもたれ感(食後の重だるさ)
  • みぞおちの痛みや不快感
  • 胃の張り、膨満感
  • 食欲不振
  • 吐き気
  • げっぷが増える
  • 胃酸が少なくなることで起こる口臭や消化不良
  • 長期間続く疲労感や体重減少(重度の場合)

慢性胃炎では、急性胃炎のように突然の強い痛みが出ることは少なく、軽い症状が長く続くのが特徴です。しかし、症状がほとんどないまま進行することも多い病気です。

特にピロリ菌感染による萎縮性胃炎では、粘膜が徐々に薄くなっても痛みを感じにくく、「検診や胃カメラで初めて指摘された」というケースも少なくありません。

慢性胃炎の診断・検査Chronic Gastritis-04

慢性胃炎は、症状だけでは判断が難しい病気です。
胃の不調が続く場合は、上部内視鏡検査(胃カメラ検査)で直接胃の粘膜を観察し、炎症の程度や原因を確認することが大切です。

胃カメラ検査(上部内視鏡検査)

慢性胃炎の診断に最も有用な検査です。
胃の中を直接観察し、粘膜の赤み、腫れ、びらん(ただれ)、萎縮(粘膜の薄まり)などを確認します。
必要に応じて粘膜の一部を採取(生検)し、炎症の程度や他の病気がないかを詳しく調べます。

内視鏡で見られる主な所見例

  • 表層性胃炎:粘膜の赤みや腫れ、点状発赤(小さな赤い点が散在)
  • びまん性発赤:胃粘膜全体が赤くなる状態で、炎症の広がりを示す
  • 萎縮性胃炎:粘膜が薄く、血管が透けて見える
  • 鳥肌胃炎:胃の粘膜がざらざらした見た目で、ピロリ菌感染が関連
  • 白っぽい粘膜(粘液の分泌低下や粘膜萎縮を反映)
  • その他:粘膜の隆起、小さなびらん、浮腫状の変化など

これらの所見を組み合わせて、慢性胃炎の種類や程度、ピロリ菌感染の有無を推定します。

ピロリ菌検査

慢性胃炎(萎縮性胃炎)の大きな原因であるピロリ菌の感染を調べます。

その他の検査

必要に応じて血液検査や画像検査を行うことがあります。

当院での検査について

胃酸分泌の状態を詳しく調べる検査は一部の施設で行われますが、当院では通常、まず胃カメラで胃の状態を確認します。
必要に応じて、血液検査や画像検査を組み合わせ、胃の状態を総合的に判断しています。

慢性胃炎の治療Chronic Gastritis-05

慢性胃炎の治療は、胃炎の種類や程度、原因によって治療法が異なるため、胃カメラや血液検査で原因を特定した上で、最適な治療を行います。
基本的な治療の方針は、「原因の除去」「胃粘膜の保護」になります。

原因別の治療

ピロリ菌感染による慢性胃炎

ピロリ菌感染が原因の場合、除菌治療が行われます。
除菌治療は、抗菌薬と胃酸を抑える薬(PPIなど)を組み合わせて1~2週間行います。
除菌により炎症の進行を抑え、胃がんリスクの低減にもつながります。


薬剤性胃炎(NSAIDsなど)

長期間の痛み止め使用が原因の場合、まず原因となる薬の使用を見直すことが重要です。
必要に応じて、胃粘膜を保護する薬(PPI、H2ブロッカーなど)を使用します。


自己免疫性胃炎

自己免疫性胃炎の場合は、ビタミンB12の補充や貧血の管理など、症状や合併症への対応が中心となります。
胃粘膜自体を治す特効薬はありませんが、定期的な経過観察で合併症を防ぐことが可能です。


生活習慣・食事による胃炎

過度なストレス、不規則な生活、アルコールや喫煙なども慢性胃炎を悪化させる要因です。
以下のような生活改善が治療に役立ちます。

  • 食事を規則正しく、腹八分目を心がける
  • アルコールや刺激物を控える
  • 禁煙する
  • 十分な睡眠とストレスの軽減

放射線胃炎・ハイルマニ菌感染
  • 放射線胃炎:炎症を抑える薬(粘膜保護薬、制酸薬など)で症状を管理
  • ハイルマニ菌感染:ピロリ菌と同様に抗菌薬による除菌療法が行われます

胃粘膜を保護する薬物療法

  • プロトンポンプ阻害薬(PPI):胃酸を抑え、粘膜の治癒を助ける
  • H2ブロッカー:胃酸をやや抑える薬
  • 粘膜保護薬:胃粘膜を守り、炎症やびらんの改善を助ける

さいごにChronic Gastritis-06

胃の不快感やもたれが続く場合は、自己判断せず、一度受診することが大切です。
慢性胃炎は長期間かけて進行することがあり、症状が落ち着いていても、定期的に胃カメラ検査で胃粘膜の状態を確認することが重要です。

特に萎縮性胃炎を指摘された方は、定期的な胃カメラによる経過観察が大切です。
当院では、原因に応じた適切な治療や生活指導を行い、患者さま一人ひとりに合わせた診療を心がけています。