潰瘍性大腸炎とは?
Ulcerative Colitis-01
潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)は、大腸の粘膜に慢性的な炎症が起こる病気です。
比較的若い世代に多く発症し、症状が落ち着く「寛解」と、悪くなる「再燃」を繰り返すことが特徴です。
炎症は直腸から始まり、大腸に向かって連続的に広がるのが典型的で、下痢・血便・腹痛などが主な症状です。
原因はまだ明確ではありませんが、免疫の異常・遺伝的要因・腸内細菌環境などが関係していると考えられています。
潰瘍性大腸炎は、クローン病と並ぶ炎症性腸疾患(IBD)の一つで、国の指定難病に指定されています。
そのため、条件を満たせば医療費助成を受けられます。
当院では、潰瘍性大腸炎の難病申請に必要な診断書発行や手続きのサポートが可能です。
ご希望の方はお気軽にご相談ください。
潰瘍性大腸炎の症状
Ulcerative Colitis-02
潰瘍性大腸炎は、直腸から大腸にかけて炎症が起こるのが特徴です。
炎症の広がりや重症度によって症状はさまざまですが、症状が良くなる「寛解期」と、悪くなる「活動期」を繰り返します。
主な症状(腸管症状)
- 頻回の排便・下痢(粘液を伴うことも)
- 粘血便(鮮血が混じることが多い)
- 腹痛・腹部不快感
- 便意があるのに少ししか出ない(しぶり腹・残便感)
- 発熱(悪化時)
- 体重減少、倦怠感(主に重症例)
※直腸のみに炎症がある「直腸炎型」では、便の回数が多くなくても血便・しぶり腹が目立ちやすいのが特徴です。
症状悪化のサイン
以下の症状が見られるときは、活動期の悪化や重症化の可能性があります。
早めの受診が重要です。
- 発熱
- 強い腹痛
- 1日6回以上の排便
- 脈が速い、強い倦怠感
- 体重減少
- 貧血症状(動悸、めまい)
- 脱水症状
- 大量の血便
潰瘍性大腸炎の合併症
Ulcerative Colitis-03
潰瘍性大腸炎は腸の病気ですが、炎症が強まると腸以外にも影響が出ることがあります。
合併症を防ぐためには、早期治療と寛解維持がとても大切です。
腸に関わる合併症(腸管合併症)
- 大腸出血
-
炎症が強いと大量出血につながり、貧血やショックを起こす可能性があります。
- 大腸拡張(中毒性巨大結腸症)
-
大腸が異常に拡張し、発熱・強い腹痛・腹部膨満が出現。
穿孔(せんこう:腸に穴があくこと)のリスクが高く、緊急治療が必要となる重篤な状態です。 - 大腸がんの発症リスク上昇
-
長期間炎症が続くと大腸がんの発症リスクが一般より高くなります。
定期的な大腸内視鏡検査が推奨されます。 - 肛門周囲の症状
-
裂肛や痔が悪化することがあります。
※クローン病に比べると頻度は低めです。
腸以外の合併症(腸管外合併症)
潰瘍性大腸炎は免疫機能と関連しているため、全身に影響が及ぶことがあります。
- 関節炎(膝・足首などの痛み、腫れ)
- 皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症 など)
- 眼の症状(ぶどう膜炎・虹彩炎)
→ 目の痛み・充血・視力低下は早めの受診が必要です。 - 胆管の病気(原発性硬化性胆管炎:PSC)
胆管が狭くなる病気で、定期的な血液検査・画像検査が必要な場合があります。 - 貧血(出血や炎症に伴う鉄欠乏)
- アフタ性口内炎(口内に小さな潰瘍・痛み)
潰瘍性大腸炎の分類Ulcerative Colitis-04
潰瘍性大腸炎に特徴的な2つの病期
潰瘍性大腸炎は 「活動期」 と 「寛解期」 を繰り返す慢性の病気です。
- 活動期(再燃期)
-
血便などの症状がみられ、内視鏡検査では粘膜にびらん・潰瘍が認められます。
症状が悪化している状態を「再燃」と呼びます。 - 寛解期
-
活動期の症状が治まり、粘膜からびらんや潰瘍が消えて、症状や炎症が落ち着いている状態です。治療の目的はこの時期を長く維持することにあります。
病変の広がりによる3つの病型
潰瘍性大腸炎は、炎症が直腸から上のほうに向かって連続的に広がるのが特徴です。
そのため、炎症の範囲によって次の3つに分類されます。
- 直腸炎型
-
直腸のみに炎症があるタイプ。
血便やしぶり腹が目立つことがあります。 - 左側大腸炎型
-
炎症が脾彎曲部まで広がっているタイプ。
症状は直腸炎型より強くなりやすい傾向があります。 - 全大腸炎型
-
炎症が脾彎曲部を超えて大腸全体に広がるタイプ。
重症化や合併症のリスクが高く、注意が必要です。
臨床で用いられる重症度分類
潰瘍性大腸炎は、症状の強さや炎症の程度によって 「軽症」「中等症」「重症」 の3つに分類されます。
以下の①~⑥の項目を総合して評価します。
| 軽症 | 中等症 | 重症 | ||
|---|---|---|---|---|
| 1 | 排便回数 | 4回以下 | 重症と軽症の中間 | 6回以上 |
| 2 | 顕血便 | (+)~(-) | (+++) | |
| 3 | 発熱 | (-) | 37.5℃以上 | |
| 4 | 頻脈 | (-) | 90/分以上 | |
| 5 | 貧血(ヘモグロビン) | (-) | Hb10g/dl以下 | |
| 6 | 赤沈またはCRP | 正常 | 30㎜/h以上 | |
「劇症」と呼ばれる状態
重症の中でも、特に以下のような強い炎症反応を示す場合、「劇症」としてより注意が必要です。
- 1日15回以上の血性下痢が続く
- 38℃以上の高熱
- 白血球数 10,000/㎜³以上の増多
- 強い腹痛が持続
劇症の場合は、入院治療や迅速な全身管理が必要となることがあります。
潰瘍性大腸炎の診断・検査
Ulcerative Colitis-05
潰瘍性大腸炎は、症状だけで診断できる病気ではありません。
下痢や血便といった症状は、感染性腸炎・虚血性腸炎・薬剤性腸炎など、他の大腸炎でも起こり得ます。
そのため、潰瘍性大腸炎の診断には複数の検査結果を組み合わせた総合的な判断が必要です。
潰瘍性大腸炎の診断に用いられる主な検査は以下のとおりです。
- 血液検査
- 大腸内視鏡検査(大腸カメラ)
- 便検査(感染症除外・便中カルプロテクチンなど)
- 腹部レントゲン検査
- 腹部超音波検査(腹部エコー)
- 腹部CT検査
- カプセル内視鏡検査(※当院では実施しておりません)
潰瘍性大腸炎の確定診断は、主に
①症状、②大腸内視鏡検査、③病理組織検査の3つをもとに行います。
① 症状・問診
診察では、現在の症状や経過を詳しく伺います。
- いつから症状が出ているか
- 下痢・血便の回数
- 腹痛の有無
- 発熱の有無
- 体重減少の有無
- 旅行歴や食事内容(感染性腸炎との鑑別)
- 服用中の薬(抗菌薬、NSAIDsなど)
症状は重症度判定にも関わるため、詳しい問診が診断の第一歩となります。
② 大腸内視鏡検査(診断の中心となる検査)
潰瘍性大腸炎の診断に欠かせない検査は大腸内視鏡検査(大腸カメラ) です。
内視鏡では次のような所見を確認します。
- 粘膜のびらん・潰瘍
- 発赤・浮腫
- 血管透見像の消失
- 易出血性
- 直腸から連続して広がる炎症(潰瘍性大腸炎の特徴)
特に、連続性に広がる炎症は潰瘍性大腸炎を示唆する重要な所見です。
また、炎症範囲(病変の広がりによる3つの病型)を把握することで、治療方針や重症度の判断(臨床における重症度分類)にも役立ちます。
③ 病理組織検査(生検による確認)
内視鏡検査中に採取した組織を、病理検査機関へ提出し、詳しく評価します。
病理検査(生検)では、炎症細胞の分布や特徴、UC特有の粘膜変化などを確認し、
- 潰瘍性大腸炎とクローン病の鑑別
- 感染症や腫瘍性病変の除外
に役立ちます。
潰瘍性大腸炎の診断は、この病理組織検査が揃うことで初めて確定します。
大腸内視鏡検査(大腸カメラ)の重要性・頻度
潰瘍性大腸炎は、症状が落ち着いているように見えても、大腸の中では炎症が残っていることがあります。
そのため、
- 治療が効いているかどうかの判断
- 炎症の広がりや深さの確認
- 大腸がんの早期発見(潰瘍性大腸炎ではリスクが高まります)
といった目的で、定期的な大腸内視鏡(大腸カメラ)によるチェックが重要です。
しかし、炎症が強い時期は痛みを感じやすく、不安に思う方が多いのも事実です。
当クリニックでは、潰瘍性大腸炎の方でも安心して大腸カメラを受けられる環境づくりを大切にしています。
鎮静剤を使用し、苦痛の少ない内視鏡検査を心がけております。
潰瘍性大腸炎の治療を続ける上で、大腸カメラはとても大切な検査です。
「痛みが心配」「つらい検査は避けたい」という方も、どうぞお気軽にご相談ください。
潰瘍性大腸炎の治療Ulcerative Colitis-06
長く症状が落ち着く方もいますが、完全に治る治療法は現時点では確立されていません。
そのため、炎症をしっかり抑え、再燃を防ぎ、良い状態を維持することが治療の大きな目標となります。
基本的に、治療の考え方は大きく以下の2段階に分かれます。
- 寛解導入療法:症状や炎症を速やかに抑える治療
- 寛解維持療法:症状が落ち着いた状態を長く続けるための治療
当院では、診断から治療、経過観察まで一貫して対応し、患者さま一人ひとりの症状や生活背景に合わせた診療を行っています。
5-ASA製剤、ステロイド、免疫調整薬、生物学的製剤、JAK阻害薬など、幅広いIBD治療に対応しています。
また、自己注射製剤やレミケード®などの点滴治療にも対応しており、病状やライフスタイルに応じた治療選択をご提案しています。
生活習慣の改善
Ulcerative Colitis-07
潰瘍性大腸炎は薬物療法が治療の中心ですが、日常生活を整えることで症状の悪化を防ぎ、落ち着いた状態(寛解)を長く保つことが期待できます。
「完璧を目指す」必要はなく、無理のない範囲での工夫が大切です。
食生活のポイント
潰瘍性大腸炎を治す特別な食事はありませんが、腸への負担を減らすことが大切です。
刺激の強い食品を控える
辛いもの、脂っこい料理、アルコール、カフェインは、下痢や腹痛を悪化させることがあります。
食物繊維の量を調整する
- 再燃期(症状が悪い時)…生野菜、海藻、きのこ、玄米など“不溶性食物繊維”で症状が悪化することがあります。
- 落ち着いている時期(寛解期)…無理のない範囲で、消化しやすいものからバランス良く取り入れましょう。
少量を数回に分けて食べる
一度に大量に食べるより、腸への負担が軽くなります。
ストレス対策
ストレス自体が病気の原因ではありませんが、再燃のきっかけになることがあります。
- 十分な睡眠をとる
- 適度に休憩をとる
- 過労を避ける
- 深呼吸・ストレッチなどのリラックス
- 散歩や趣味など、気分転換を日常的に取り入れる
感染症の予防
感染症は再燃につながることがあるため、普段から注意が必要です。
- 手洗い・うがいを習慣にする
- 必要に応じてワクチン接種を検討(インフルエンザなど)
- 生ものの食べ過ぎに注意
適度な運動
腸の調子を整えたり、ストレスを軽減する効果があります。
- ウォーキング、軽いストレッチなど、無理のない運動がおすすめ
※症状がある時は、腹圧のかかる動きや激しい運動は控える
潰瘍性大腸炎とうまく付き合っていくためにUlcerative Colitis-08
妊娠・出産について
潰瘍性大腸炎があっても、妊娠・出産は可能です。
ただし、妊娠・出産・授乳には 現在使用している薬が影響する場合 があります。
- 妊娠は寛解期(症状が落ち着いている時期)に計画することが望ましい
- 妊娠中も 寛解の維持が重要
- 妊娠を希望する場合は、必ず事前に医師へご相談ください
当院では、妊娠を考えている方へ薬の調整や治療計画のご相談も行っています。
潰瘍性大腸炎で注意すべき薬
潰瘍性大腸炎では、腸の炎症が強い時に 状態を悪化させたり、副作用が強く出る 可能性のある薬があります。
以下の薬は 原則として使用を避ける(禁忌)、または 慎重投与 が必要です。
原則として避けたほうがよい薬、または注意が必要な薬
- 下痢止め(ロペラミド)
- NSAIDs(ロキソニン・ボルタレンなど)
- アスピリン
下痢止め(ロペラミド)について
症状が悪い時に使用すると、命の危険を伴う 「中毒性巨大結腸症」 を引き起こすことがあります。
NSAIDs・アスピリンについて
腹痛や下痢を悪化させ、再燃のきっかけになることがあります。
持病などの理由でこれらの薬を飲まれている場合は、必ず事前にご相談ください。
薬を自己判断で中断しないこと
- 症状が安定していても
- 調子が良いと感じていても
寛解維持のための薬を自己判断で薬を減らしたり中止すると、再燃しやすくなります。
「最近調子が良い」「薬を減らしたい」と感じた際も、必ず医師へご相談ください。
さいごに
Ulcerative Colitis-09
潰瘍性大腸炎は、長く付き合っていく必要のある病気ですが、
適切な治療と定期的なフォローを行うことで、症状を安定させながら日常生活を維持することができます。
当院では、
- 一人ひとりの症状・治療歴に合わせた治療選択
- 症状がなくても続けられる寛解維持のサポート
- 最新の内視鏡検査による炎症評価
- 妊娠・出産、生活習慣の相談
など、潰瘍性大腸炎の患者さまが安心して過ごせるよう、継続的な診療・サポートを行っています。
「最近調子が悪い」「治療について相談したい」など、どんな些細なことでも構いません。
潰瘍性大腸炎でお困りの方は、どうぞお気軽にご相談ください。







